前回までに、住宅購入を**「毎月いくら残るか」から考え始めること、そして住宅予算を考えるときは年収だけではなく、実際の「手取り」**を見ることについてお話ししました。
今回は、その第一歩を実際にやってみます。
「住宅を買うなら、まず家計簿をつけなければ」
そう思う方もいるかもしれません。
でも、最初から1円単位で家計を把握する必要はありません。
私も会社の経理に30年以上携わってきましたが、家計を考えるときも大切なのは、**「すべてを完璧に記録すること」ではなく、「判断に必要な数字をつかむこと」**だと考えています。
家計簿がなくても大丈夫です。
まず30分。
住宅購入を考えるための**「家計の現在地」**を確認してみましょう。
30分でいい理由——まず知りたいのは「残るお金」
家計簿をつけようとすると、食費、日用品、光熱費など、細かな支出まで記録したくなります。
もちろん、詳しい家計分析をする段階では必要になることもあります。
でも、住宅購入を考え始めたばかりなら、まず確認したいのは次の3つです。
- 毎月、いくら入ってくるか
- 毎月、いくら出ていくか
- 差し引き、いくら残っているか
この3つが分かれば、住宅購入を考えるための出発点になります。
最初から完璧を目指す必要はありません。
まずは「今の暮らしで、毎月いくら残っているのか」を知る。
そこから始めます。
最初の30分家計チェック——4つのステップ
ステップ1|手取りを確認する【5分】
最初に見るのは、給与明細などで確認できる**「手取り」**です。
給与から税金や社会保険料などが差し引かれ、実際に受け取っている金額を確認します。
共働きの場合は、夫婦それぞれの手取りを確認して、世帯全体で考えてみましょう。
ボーナスがある場合は、年間の手取りも確認しておきます。
ただし、毎月の住宅ローンを考えるときは、
「ボーナスがなくても、毎月の収入で家計が回るか」
という視点も持っておきたいところです。
ステップ2|毎月ほぼ決まって出ていくお金を確認する【10分】
次に、毎月ほぼ決まって出ていくお金を確認します。
家計簿がなくても、銀行口座やクレジットカードの明細を見れば、主な支出を確認できます。
たとえば、
- 家賃・駐車場代
- 生命保険・医療保険などの保険料
- スマートフォン・インターネットなどの通信費
- 習い事・塾の月謝
- サブスクリプション
- 車のローン
- 毎月決まった積立
などです。
まずは1か月分の銀行口座とクレジットカードの明細を見て、**「毎月ほぼ同じ金額が出ていくもの」**を書き出してみてください。
ここでも、1円単位まで合わせる必要はありません。
ステップ3|生活費をざっくり確認する【10分】
次は、食費や日用品、ガソリン代など、毎月金額が変わる生活費です。
ここも最初から細かく分類する必要はありません。
銀行口座やクレジットカード、電子マネーなどの履歴を見ながら、
「だいたい毎月これくらい使っている」
という金額を出してみます。
たとえば、
食費 6万円
日用品 1万円
ガソリン代 2万円
その他 2万円
なら、生活費はおよそ11万円です。
まずは、このくらいの把握で構いません。
詳しい支出の分け方については、次回の記事で考えていきます。
ステップ4|「残るお金」を計算する【5分】
最後に、計算します。
計算式はシンプルです。
手取り − 毎月の支出 = 残るお金
たとえば、
手取り 33万円
毎月の支出 28万円
なら、
33万円 − 28万円 = 5万円
です。
この5万円が、現在の暮らしで毎月残っているお金です。
まずは、この数字を知ることが大切です。
Dさん夫婦の例で見てみる
※以下の数字はすべて架空の例です。実際の家計は世帯によって異なります。
Dさん夫婦(架空例・子ども1人・賃貸暮らし)
| 項目 | 金額 |
| 手取り | 33万円 |
| 家賃 | 8万円 |
| その他の固定費 | 7万円 |
| 生活費 | 13万円 |
| 残るお金 | 5万円 |
Dさん夫婦は、現在の賃貸生活では毎月5万円が残っています。
では、住宅を購入して、現在8万円の家賃が10万円の住宅ローンに変わったらどうなるでしょうか。
単純に置き換えると、住宅費は毎月2万円増えます。
そのため、
残るお金5万円 − 住宅費の増加2万円 = 3万円
となります。
一見すると、3万円残るので大丈夫そうに見えるかもしれません。
でも、持ち家になると住宅ローン以外にも、固定資産税、火災保険、将来の修繕費などが必要になります。
さらに、子どもの教育費が増える時期や、車の買い替えなどもあるでしょう。
だから、
「住宅ローンを払っても黒字だから大丈夫」
だけでは判断できません。
住宅を買ったあとに増える支出と、これから必要になるお金まで考えて、どのくらい余白を残しておくかを見る必要があります。
「残るお金」がマイナスなら、原因を確認する
30分チェックをした結果、
「あれ? 毎月マイナスになっている」
ということもあるかもしれません。
その場合は、まず原因を確認します。
たとえば、
- クレジットカードの支払い時期がずれている
- ボーナスや臨時収入で毎月の不足分を補っている
- 貯蓄を取り崩している
- 年払いの支出を計算に入れていない
- 支出の一部を見落としている
などが考えられます。
大切なのは、マイナスだったこと自体を問題にするのではありません。
「なぜマイナスになっているのか」を知ることです。
住宅ローンは、長期間にわたって毎月支払い続けます。
そのため、現在の家計が毎月の収入だけでは回っていないのであれば、住宅ローンを考える前に、まずその原因を確認しておきたいところです。
30分チェックは「住宅予算を決める作業」ではない
ここで、もう一つ大切なことがあります。
今回の30分チェックだけで、
「住宅ローンはいくらまでなら大丈夫」
と決めるわけではありません。
まだ教育費も、車の買い替えも、住宅購入後の維持費も、老後のお金も詳しく計算していないからです。
今回の目的は、
住宅予算を決めることではなく、自分たちの家計の現在地を知ること。
まず現在地を確認してから、これから必要になるお金を一つずつ加えていきます。
まとめ
家計簿をつけていなくても、住宅購入を考えるための最初の家計チェックはできます。
最初に確認するのは、
手取り → 毎月の支出 → 残るお金
です。
そして「残るお金」が分かったら、そこで終わりではありません。
住宅を購入すると、住宅ローン以外にもお金がかかります。
教育費や車、老後など、これからの暮らしにもお金が必要です。
だからこそ、
まず現在の家計を知る。
そのあとに、住宅を買ったあとの家計を考える。
この順番で進めていきます。
今日の結論
家計簿がなくても大丈夫。まず30分で「今、毎月いくら残っているのか」を確認する。
なぜ?
住宅予算を考えるには、まず現在の家計がどのような状態なのかを知る必要があるからです。
最初から1円単位で家計簿を作る必要はありません。
あなたの場合
今月の給与明細、銀行口座、クレジットカードなどの明細を用意してください。
手取り − 毎月の支出 = 残るお金
を一度計算してみましょう。
今は買わない方がいいとしたら
毎月の収入だけでは支出をまかなえず、ボーナスや貯蓄の取り崩しで補っている場合は、住宅購入を急ぐ前に、その原因を確認してみてください。
家計を整えてから住宅購入を考えることも、大切な選択肢です。
今週の一歩
30分だけ時間を取り、「毎月いくら残っているのか」を紙に書いてみる。
次回予告
第4回|毎月の支出を「固定費・変動費・特別費」の3つに分けてみる
今回の30分チェックでは、毎月の支出をざっくり確認しました。
次回は、その支出を「固定費・変動費・特別費」の3つに分けて、家計のどこにお金がかかっているのかをもう少し詳しく見ていきます。
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